遺産分割における配偶者の保護「民法の相続法改正」

  • 2020年11月30日
  • 2021年7月25日
  • 相続
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遺産分割における配偶者の保護「民法の相続法改正」

2018年7月に国会で民法の中の相続法が改正されました。

その中の一つが遺産分割においての一定の要件を満たす配偶者の保護です。

自宅を遺産分割の対象から外すことが可能となりました。

一定の要件を満たす配偶者は自宅を遺産分割の対象から外すことが可能となりました。

改正の理由

長年連れ添った夫婦の一方が亡くなった場合、残された配偶者も高齢になっていることも多く、そのような高齢な配偶者を保護する必要性がるからです。

一定の要件とは

改正民法903条4項は婚姻関係が20年以上の夫婦の一方が、他の一方に対し、その居住用に供する建物又はその敷地を遺贈又は贈与したときは被相続人がその贈与等について持戻し免除の意思表示をしたものと推定すると規定しています。

簡単な要件は二つですかね↓

①婚姻の期間が20年以上

自宅を配偶者に贈与又は遺贈

持戻し免除の意思表示とは

遺産分割では基本的に相続人に対する遺贈や贈与があった場合、遺産の前渡しと考えて、贈与等の対象財産を相続財産とみなして、相続人の法定相続分を修正します。

しかし被相続人が贈与等について反対の意思を表示した場合には持戻し(法定相続分の修正)は行いません。

これを持分免除の意思表示といいます。

配偶者に対する持戻し免除の意思表示の推定

改正前は夫が自宅を妻に贈与したり、遺言書に自宅を妻に遺贈すると書いた場合に、妻が自宅を取得した場合には特別受益としてその贈与又は遺贈の分を遺産分割の時の計算の基礎の額に戻して計算していましたが、婚姻の期間が20年以上自宅を配偶者に贈与又は遺贈する場合には配偶者に対する持戻し免除の意思表示の推定がされるので持戻しは行われません。

このような婚姻の期間が20年以上の夫婦が自宅を配偶者に贈与又は遺贈した場合には、その部分を遺産分割の対象から外す意思(持戻しをしない意思)があると通常考えられるからです。

またこの制度はあくまでも自宅が対象なので自宅兼店舗の場合には自宅の部分だけが持戻し免除の意思表示の推定の対象になります。

具体例 夫が遺言で妻に自宅5,000万円を遺贈した場合

具体例として

「相続人」       妻と長男

「相続財産」 自 宅 5,000万円

       預貯金 5,000万円

「改正前」これまで

(遺贈した自宅を遺産分割の対象に含める)

妻の相続分

(5,000万円+5,000万円)×1/2 - 5,000万円(自宅)=0

自宅しかもらえません。

長男の相続分

5,000万円(預貯金)

「改正後」これから

(遺贈した自宅を遺産分割の対象に含めない)

妻の相続分

5,000万円(預貯金)×1/2=2,500万円

遺贈の自宅と遺産分割で得た預貯金(改正後の方が妻は2,500万円多く取得できる

長男の相続分

5,000万円(預貯金)×1/2=2,500万円(預貯金)

具体例②夫が遺言で妻に自宅6,000万円の持分2分の1を遺贈の生前贈与した場合

具体例として

「相続人」       妻と長男

「相続財産」 自宅の持分2分の1 3,000万円

       預貯金       4,000万円

「改正前」これまで

(遺贈した自宅を遺産分割の対象に含める)

妻の相続分

(6,000万円+4,000万円)×1/2 - 3,000万円(自宅)=2,000万円

生前贈与の自宅の持分2分の1の3,000万円と遺産分割で2,000万円を取得できます。

合わせて5,000万円

長男の相続分

5,000万円

「改正後」これから

(遺贈した自宅を遺産分割の対象に含めない)

妻の相続分

自宅の持分2分の1の3,000万円と4,000万円(預貯金)×1/2=3,500万円

生前贈与の自宅の持分2分の1の3,000万円と遺産分割で3,500万円を取得できます。

合わせて6,500万円改正後の方が妻は1,500万円多く取得できる

長男の相続分

自宅の持分2分の1の3,000万円と4,000万円(預貯金)×1/2=3,500万円